沼 正作 (ぬましょうさく)

[昭和43(1968)年2月1日〜平成 4(1992)年2月15日]

 昭和 4(1929)年2月7日和歌山県に生まれた。第三高等学校を経て,昭和27(1952)年京都大学医学部医学科を卒業し,兵庫県立尼崎病院での実地修練の後,昭和28(1953)年4月京都大学大学院研究奨学生として同大学医学部第一内科学教室に入局した。昭和31(1956)年からは同大学院に在籍し,同年7月にフルブライト奨学生としてアメリカ合衆国へ渡り,同33(1958)年8月までハーバード大学医学部生化学教室 J. Lawrence Oncley 教授に師事した。昭和32(1957)年8月に京都大学から医学博士を授与された。昭和33(1958)年9月からフンボルト奨学生として西独ミュンヘンのマックス・プランク研究所およびミュンヘン大学理学部へ留学し,Feodor Lynen 教授に師事した。昭和36(1961)年に帰国,同年2月京都大学医学部医化学教室において早石 修教授のもとで助手となり,同37(1962)年1月に助教授に昇任した。昭和38(1963)年5月再び西独に渡り,マックス・プランク細胞化学研究所でビッセンシャフトリッヘル・アシスタントとして,脂質代謝とその酵素の研究に従事した。昭和43(1968)年に帰国し,同年2月京都大学医学部医化学第二講座教授に就任,爾来24年間,生化学の教育と研究に専念した。昭和60(1985)年4月からは医学部分子遺伝学講座教授を兼任した。この間,脂質生合成とその調節に関する研究,オピオイド・ペプチド群の前駆体の研究,神経情報の伝達を司る膜受容体とイオン・チャンネルに関する研究等を精力的に展開し,分子神経生物学の分野を世界に先駆けて確立した。その功績により,朝日賞,日本学士院賞,Heirich Wieland 賞,Otto Warburg メダル,F.O. Schmitt 神経科学賞等,国内,国外の数多くの賞を受賞した。さらに,英国王立協会外国人会員,ドイツ自然科学者アカデミー Leopoldina 会員,米国科学アカデミー外国人会員に選定され,平成 3(1991)年11月には文化功労者に選ばれた。また,昭和63(1988)年 度に日本生化学会会長を勤めた。平成 4(1992)年2月15日急性心不全のため逝去。享年63歳。