京都大学医学部医化学教室は,明治32年に創設され,本年をもって記念すべき100周年を迎えることとなった。
 初代の荒木寅三郎教授から,前田 鼎教授,内野仙治教授までの在任期間である,明治・大正・昭和の最初の60年間は,わが国に生化学の新たな学統を築きあげることに努力を傾け大きな成果を上げた。それに続く昭和・平成の約40年は,早石 修教授を中心に,沼 正作教授,本庶 佑教授,月田承一郎教授が,わが国の生化学を国際的に評価されうる水準にまで高めるのに大きく貢献した。
 この間,ほぼ1000名近くの人々が,医化学教室で生化学・分子生物学を学び,各自の研究を通して京都大学の伝統である「number one になるのでなく,only one になる」という精神を身につけ,ここを巣立ち飛翔していった。わが国の教育・研究において顕要な地位に就き,あるいはそのような地位で活躍中の同窓の方々は枚挙にいとまがない。学問上の褒賞として,早石 修,西塚泰美両先生の文化勲章,沼 正作先生の文化功労者,さらに日本学士院賞に,古くは古武弥四郎,冨田雅次,清水多栄,木村 廉,近年では早石 修,西塚泰美,沼 正作,本庶 佑,中西重忠の先生方があり,海外における種々の受賞等を含めると,いかにわが医化学教室の関係者が国内外において学術振興に大きな貢献をしたかがわかるであろう。
 創設100周年を機に,記念事業として記念誌を作製し,記念祝賀会ならびに講演会を開催することを計画した。本記念誌は,歴代教授のプロフィールをはじめとして,教室の歴史に加えて,教室に在籍した方々から随想を寄稿していただき掲載した。過去を振り返りながら,来るべき新しい世紀における京都大学医学部医化学教室の一層の発展を祈念しつつ,本誌を発刊するところである。

  平成11年6月

京都大学医学部医化学教室  
100 周 年 記 念 事 業 委 員 会