Claudin multigene family encoding four-transmembrane domain protein components of tight junction strands

Morita,K., Furuse,M., Fujimoto,K., and Tsukita,Sh.     

Proc.Natl.Acad.Sci.USA.   96,511-516  (1999)

Claudin-11/OSP-based tight junctions in myelinated sheaths of oligodendrocytes and in Sertoli cells in testis

Morita,K., Sasaki,H., Fujimoto,K., Furuse,M., and Tsukita,Sh.    

J.Cell Biol.  145,579-588  (1999)


【筆頭著者紹介】  

    
森田さんは、京大皮膚科のお医者さんで、大学院一年生から我々の研究室で
タイトジャンクショングループに属し研究を始めました。 180センチを
越す巨漢から溢れるエネルギーは並のものではなく、フラフラになりながら
も一年間、研究室のスタッフで一番ハードワーカーの助手、伊藤さんにマン
ツーマンで鍛えられた後は、その能力を遺憾なく発揮されています。 
特に最近は、得意のコンピューター操作も駆使して、新しいクローディンを
3番から10番まで同定し、すべての抗体作りにチャレンジし、そのうちの
いくつかのクローディンの興味深い分布を解析中です。 その第一報がPN
ASの論文で、第二報がJCBの論文です。 現在、もう一つの血管特異的
なクローディンについて詳細に解析した結果を投稿中です。
 デカイわりには、心の優しい細やかな面があり、3月に博士課程を修了し
ましたが、10月から一年間程、出雲の国へ出向して臨床に専念するそうです。
この2つの論文の間に結婚し、心身ともに充実しています。 一年間、研究
のブランクができるのが残念ですが、少し頭を冷やして皮膚領域から今後何
ができるかをじっくりと考えてみるのも長い目で見れば良いのかもしれません。
将来の皮膚科領域を引っ張っていって欲しいと願っています。


【PNAS論文】 クローディンー1とー2が同定されたので、そのアミノ酸配列を もとにデータベースをサーチしたところ、複数のホモロージーの ある配列が見つかりました。 そのうちの3つは、RVP1, CPER、TMVCFという名ですでに全長がヒトなどで記載さ れている遺伝子でしたが、これらの生理的機能は不明でした。  まず、これらのマウスホモログの全長cDNAを単離しました。  また、いくつかのESTクローンにもヒットしたので、それらか らさらに3種類の全長cDNAを単離しました。  すなわち、 全部で8種類のクローディンが単離されたわけで、クローディン ー1からー8と名付けました。 左図はその系統図です。  それぞれをタグをつけて、MDCK細胞に導入したところ、すべ てタイトジャンクションへ濃縮しましたので、これらはすべてタ イトジャンクションを作る能力があると判断しました。 左図は、ノザンにより、これらの組織別発現 を見たものです。 組織によって複雑な組み 合わせでクローディンが発現していることが 分かります。 また、クローディンー3, ー4,ー8に対するポリクローナル抗体が取 れ、組織を染めたところすべてタイトジャン クションを染めました。 下図はクローディ ンー3に対する抗体で肝臓と腎臓を染めたも のです。 これらの結果から、クローディン ファミリーと呼べる新しい遺伝子ファミリー が存在することが明らかになり、これらが 直接的にタイトジャンクションの形成にかか わっていると結論されました。 【JCB論文】 さて、何のためにこのような多様なクローディンが存在するのでしょうか? このような基本的な疑問に答えるために、臓器特異的な発現をしているクローディン について、特異抗体を作製し、その分布を調べていくという作業を開始しました。  まず、目をつけたのが、脳と精巣だけに発現している(左図;ノザンブロティング) クローディン−11です。 この遺伝子は、上述のPNAS論文では取り上げていま せんが、以前にOSP(oligo-dendrocyte specific protein)と称して脳と非神経 組織の間のsubtraction screeningでクローニングされていたもので、クローディン ー1,ー2と似ているために、種々の事情からクローディンー11と名付けたもので した。 クローディンー11はL細胞に導入すると立派なストランドを形成しました。   クローディンー11に対する抗体を作製し、脳の切片を染めてみると、 脳全体がまるで打ち上げ花火のように染まりました(左図)。 電子顕微 鏡レベルの解析も含めた種々の検討により、クローディンー11はミエリ ン間のタイトジャンクションの構成成分であることが証明されました。  このタイトジャンクションは、古くからフリーズフラクチャー法で観察さ れていたものですが、オクルディンやZO−1などが局在しないために、 本当のタイトジャンクションかどうか疑われていたものですが、この研究 により本当のタイトジャンクションであることが証明されたことになります。 これは、有髄神経の跳躍伝導に重要な役割を果たしているものと考えられれ ます。 また、精巣では、クローディンー11はセルトリ細胞間のきわめて よく発達したタイトジャンクションを構成していることが分かりました。 すなわち、Blood-testis barrierに直接関わっているわけです。 この論文は、きわめて複雑な、また、魅力的なクローディンの世界に初めて足を踏み入れた記念すべき一報となり ました。